先日、日本周産期・新生児医学会 学術集会に参加してきました!

さまざまな研究発表を聞く中で、
これから夏本番を迎える今、
妊婦さんやそのご家族にぜひ知っておいてほしいと感じた研究があります。
それは、
「非常に暑かった日の翌日に、常位胎盤早期剥離の発症リスクが高くなる可能性がある」
という研究です。
常位胎盤早期剥離とは
常位胎盤早期剥離とは、赤ちゃんが生まれる前に、
胎盤が子宮の壁からはがれてしまう状態です。
胎盤は、赤ちゃんに酸素や栄養を届ける大切な臓器です。
胎盤がはがれる程度によっては、
母体の出血や赤ちゃんへの酸素供給の低下につながり、
迅速な対応が必要になることがあります。
ただし、今回ご紹介する研究は、
「暑さが直接、常位胎盤早期剥離を引き起こす」と証明したものではありません。
あくまで、多くの症例を統計的に解析した結果、
暑さと発症との間に関連がみられたという研究です。
非常に暑かった日の翌日に、発症リスクが23%上昇
今回発表されていたのは、日本全国11地域における約10年間のデータを用いた研究です。
6,947件の常位胎盤早期剥離について解析したところ、
地域ごとの暑さ指数が特に高かった日の翌日に、
常位胎盤早期剥離の発症リスクが相対的に23%上昇していました。
なぜ「暑かった当日」ではなく、「翌日」にリスクが高くなったのか。
その詳しいメカニズムは、現時点ではまだ分かっていません。
また、リスクが23%上昇したというのは、
すべての妊婦さんの発症確率が23%になるという意味ではありません。
もともとの発症リスクと比較して、相対的に高くなったという結果です。
数字だけを見て、必要以上に怖がる必要はありません。
一方で、妊娠中の暑さを「少しくらい我慢しても大丈夫」と軽く考えず、
体を守る行動を意識することは大切だと考えます。
妊娠中は暑さの影響を受けやすい
妊娠中は血液量が増加し、心拍数や基礎代謝も上がります。
そのため、妊娠していないときに比べて暑さを感じやすく、
体温を調節するために体へかかる負担も大きくなります。
暑い環境では、汗をかくことで体内の水分が失われます。
脱水や暑熱ストレス、
血流の変化などが母体や胎盤にどのような影響を与えるのかは、
まだ十分に解明されていません。
しかし、妊娠中に暑さを我慢し続ける必要はありません。
「これくらいなら大丈夫」
「ほかの人も我慢しているから」
「エアコンを使うのはもったいない」
と無理をせず、早めに暑さを避けることが大切です。
妊婦さんに意識してほしい暑さ対策
妊娠中は、次のような対策を意識してください。
- のどが渇く前に、こまめに水分をとる
- 日中の特に暑い時間帯の外出を避ける
- エアコンや扇風機を適切に使う
- 暑い場所で長時間過ごさない
- 外出するときは、帽子や日傘、冷却グッズを活用する
- 暑い日の翌日も、予定を詰め込みすぎない
- 体調がいつもと違うと感じたら、早めに休む
水分の必要量や飲み物の種類について、
医師から制限を受けている場合は、かかりつけ医の指示に従ってください。
出血がなくても、産院へ連絡してほしい症状
常位胎盤早期剥離では、性器出血がみられることがあります。
しかし、胎盤のはがれた場所や出血の仕方によっては、
目に見える出血が少ない場合もあります。
次のような症状があるときは、出血がなくても様子を見すぎず、
かかりつけの産院へ連絡してください。
- 性器出血
- 持続する腹痛
- おなかが硬く張り続ける
- 胎動がいつもより少ない、または感じにくい
- 冷や汗やふらつきがある
- 何となくいつもと違う、強い不安を感じる
「こんなことで連絡していいのかな」と遠慮する必要はありません。
妊娠中の違和感について相談することも、産院の大切な役割の一つです。
休むことは、赤ちゃんが育つ環境を守ること
エアコンを使うことも、予定を変更することも、
家事を誰かに頼ることも、決して甘えではありません。
自分の体を守ることは、赤ちゃんが安心して育つ環境を守ることでもあります。
特に暑い日は、頑張れるかどうかではなく、
無理をしなくてよい環境をつくることを優先してください。
そして、非常に暑かった日は、その日の夜や翌日まで、
体調の変化に少し丁寧に目を向けてみてください。
必要以上に怖がるのではなく、
研究で分かってきたことを、日々の予防や早めの相談につなげていく。
それが、今回の研究から私たちが受け取れる大切なメッセージだと感じています。
これから、さらに暑い季節が続きます。
妊婦さん自身も、ご家族や周囲の方も、
どうか「暑さを我慢させないこと」を大切にしてください。
参考文献
Terada S, et al. Heat Stress and Placental Abruption: A Space-Time Stratified Case-Crossover Study. BJOG. 2025.
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や体調については、かかりつけの医療機関へご相談ください。













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