子どもからスマホを取り上げる、その前に。

先日、思春期学会で
「思春期のインターネットゲーム障害」
についての講演を聞きました。

ゲーム依存は、単なる「ゲームのやりすぎ」ではありません。

なぜ子どもの脳は、ゲームやスマホに惹きつけられるのか。
そのとき脳では何が起きているのか。
そして、家庭では何ができるのか。

医師としてだけではなく、
3人の子どもを育てる親としても、
とても考えさせられる内容でした。

その少しあと、
わたしたちが主催した
谷口たかひささんの「脱スマホ」の講演会を聞きました。

そこで紹介された、ある子どもの言葉が忘れられません。

「大きくなったら、スマホになりたい」

なぜ?と聞くと、

「だって、スマホになったら、
ママが僕のことをいっぱい見てくれるから」

お母さんがいつも見ているのは、自分ではなくスマホ。

だから、自分がスマホになれば、お母さんに見てもらえる。

子どものスマホの問題を考えていたはずなのに、
問われているのは子どもだけではないのだと、
ハッとしました。

なぜ、子どもはスマホやゲームに夢中になるのでしょう?

学会で、とても印象に残った話がありました。

スマホやゲームの世界では、
少ない労力ですぐに「報酬」を得ることができます。

ボタンを押せば反応がある。
動画を見ればすぐに楽しめる。
オンラインならすぐに誰かとつながれる。
ゲームで失敗しても、やり直すことができる。

一方、現実の世界では、
何かができるようになるまでに練習が必要です。

努力しても失敗することがあります。
待つことも、我慢することもあります。

さらに思春期は、
快楽や報酬に関わる脳のシステムが活発になる一方、
衝動を抑えたり、先のことを考えて行動したりする前頭前野は、
まだ発達の途中です。

いわば、

「アクセルは強いけれど、ブレーキはまだ育っている途中」

という時期です。

そこに、いつでも刺激や報酬を与えてくれる
スマホやゲームがあれば、夢中になりやすいのは当然とも言えます。

「どうしてやめられないの?」

と子どもの意志の弱さだけを責めるのではなく、
まずは大人がこの仕組みを知っておくことが大切だと思います。

ゲーム障害は「意志の弱さ」だけの問題ではありません

WHOはGaming Disorder(ゲーム障害)をICD-11に収載しています。

これは単に「ゲームを長時間すること」ではありません。

ゲームをすることを自分でコントロールできなくなり、
ほかの生活よりもゲームを優先し、
生活に問題が起きても続けてしまう状態です。

ゲームやスマホの使用が増えることで、

睡眠リズムが崩れる。
朝起きられなくなる。
学校へ行けなくなる。
運動する時間が減る。
集中力が低下する。

など、生活全体に影響が広がることもあります。

状態によっては、
本人や家族だけで何とかしようとせず、
医療機関など専門家への相談が必要になることもあります。

スマホを取り上げれば解決するのでしょうか?

ここまで聞くと、

「やっぱりスマホを使わせない方がいい」

と思うかもしれません。

でも、今回わたしが一番考えたのは、その先でした。

その子は、スマホの中で何を得ているのでしょう?

ゲームの中なら「できた」と思えるのかもしれません。

学校ではうまくいかなくても、
オンラインには安心して話せる仲間がいるのかもしれません。

現実で嫌なことがあったとき、
ゲームをしている時間だけは忘れられるのかもしれません。

もちろん、すべての子どもがそうだということではありません。

でも、スマホやゲームに夢中になっているという
「行動」だけではなく、

「この子は、ここで何を満たしているのだろう?」

と考える視点は持っていたいと思います。

スマホの画面を見る前に、
その画面を見続けている子どもを見る。

学会で聞いた「子どもの隠れたSOSを見逃さない」
という言葉が、心に残っています。

「自立とは、依存先を増やすこと」

谷口さんの講演で、もう一つ印象に残った言葉があります。

「自立とは、依存先を増やすこと」

人は、一人では生きていけません。

家族や友達に頼る。
先生や周囲の大人に相談する。

身体を動かす。
好きなことに夢中になる。
自然の中で過ごす。

安心できる場所がある。

困ったときに「助けて」と言える人がいる。

スマホを唯一の「楽しい」にしない。

ゲームを唯一の「できた」にしない。

SNSを唯一の「つながっている」にしない。

スマホ以外にも、子どもが手を伸ばせるものを増やしていく。

それも、家庭でできる大切なことなのではないでしょうか。

子どもからスマホを取り上げる、その前に。

学会では、家庭でできることとして、

生活リズムを整えること。
寝室にスマホを持ち込まないこと。
スマホやゲームをご褒美にしないこと。
外遊びなど、スマホ以外の楽しみをつくること。

そして、
親自身がスマホとの付き合い方を見直すことが挙げられていました。

もちろん、スマホをなくせばいいとは思いません。

仕事にも使います。
人ともつながります。
調べものもできます。

デジタルか、アナログか。

そんな二択ではありません。

だからこそ、子どもからスマホを取り上げる前に、
一度考えてみたいと思います。

この子は今、スマホの中に何を求めているのだろう?

そして、最初に紹介した子どもの言葉。

「スマホになったら、ママが僕のことをいっぱい見てくれるから」

この言葉は、
子どものスマホとの付き合い方だけではなく、
わたしたち大人のスマホとの付き合い方も問いかけているように
思います。

子どもに「スマホを置きなさい」と言いたくなったとき。

まずは、わたしがスマホを置いて、
目の前の子どもの顔を見てみる。

子どもからスマホを取り上げる、その前に。

できることは、そこからなのかもしれません。

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