産婦人科医のわたしが、東洋医学や薬膳を学び始めた理由

「先生が薬膳の話をするんですね。」
そう思われた方がいるかもしれない。

私は産婦人科医として16年間、西洋医学を学び、診療を続けてきた。
だからこそ、「なぜ東洋医学なの?」
という疑問を持たれるのも自然なことだと思う。

わたし自身も、初めから東洋医学を学んでいたわけではない。
でも、診療を続ける中で、少しずつ感じるようになったことがある。

「病気ではないけれど、つらい」

外来には、
「検査では異常ありません。」
そう伝えざるを得ない方が少なくない。

なんとなく疲れやすい。
冷えが気になる。
眠りが浅い。
生理前になると心も体もつらい。
更年期に入ってから調子が安定しない。
妊活を頑張っているけれど、体をどう整えたらいいのかわからない。

西洋医学は、病気を診断し、治療することが得意。

一方で、「まだ病気ではないけれど、なんとなく不調」
という状態に対しては、生活習慣や食事、睡眠などを整えていくことが
とても大切になる。

自分自身も原因不明の流産死産を繰り返し、
西洋医学に限界を感じたこともあった。

東洋医学は、「整える」という視点を教えてくれた

そんな時に出会ったのが、東洋医学や薬膳だった。
もちろん、
東洋医学には現代医学では十分に検証されていない考え方もある。

だから私は、「西洋医学より東洋医学が優れている」と
言いたいわけではない。
でも、何千年も受け継がれてきた知恵には、
現代の暮らしにも活かせる考え方がたくさんあると感じている。

病気になってから治療するだけではなく、
病気になる前から体を整える。
季節に合わせて暮らす。
毎日の食事を少し意識する。

そんな積み重ねが、未来の健康につながっていく。

この視点は、
西洋医学にも決して矛盾するものではないとわたしは思っている。

夏は「心」の季節

東洋医学では、季節ごとに大切にしたい臓腑があると考えられている。

春は「肝」
夏は「心」
秋は「肺」
冬は「腎」

そして夏は、「心」の働きが活発になる季節とされている

でも、面白いのはここから!

東洋医学では、「心」は一人で頑張っているわけではない。

心を支える存在として、「腎」がある。
心を火、腎を水にたとえ、
火と水のバランスで体が整うと考えられている。

夏は汗をたくさんかく季節。
東洋医学では、
汗とともに体の潤いやエネルギーも失われやすいと考える。

だからこそ、夏は心だけでなく、その土台となる腎も大切にしたい。
そんな知恵が、昔から受け継がれている。

今日からできる、小さな養生

難しいことをする必要はない。

黒ごまをふりかけてみる。
黒豆を食べてみる。
山芋を一品加えてみる。
しじみのお味噌汁を飲む。
そんな小さな積み重ねが、「体をいたわる時間」になる。

完璧を目指す必要はない。
「今日は少しだけ、自分の体を大切にしてみよう。」
その気持ちが何より大切だと思っている。

私が届けたいこと

私はこれからも、
産婦人科医としてエビデンスに基づいた医療を大切にしていく。

その一方で、
暮らしの中で取り入れられる東洋医学や薬膳の知恵も
紹介していきたいと思っている。

どちらか一方を選ぶのではなく、
病気を治す医学と、病気になる前から整える知恵。

その両方を知ることで、
自分や家族の体をもっと大切にできる人が増えたらうれしい。

わたしは、「いのちが育つ環境」をつくることを大切にしている。

それは、お産の時だけではない。
毎日の食事も、睡眠も、季節の過ごし方も。
どれも未来の自分や、未来の子どもたちにつながる「環境」の一つ。

そんな視点も、これから少しずつ届けていけたらと思っている。

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